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人工知能(幸田真音) | 小説の中の食事



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人工知能(幸田真音) | 小説の中の食事

 

 

 

小説の中に、食事の風景が登場することがあります。ストーリー展開には影響がないはずですが、登場人物の性格や、その場の雰囲気を表すのに食事が大切な役目を持つことがあります。

 

「人工知能(幸田真音)」の作中の食事描写。

人工知能を活用したビジネスに従事している主人公と、人工知能が原因とする事件の真相を追う話。

そのときの状況を代弁するものとして、食事風景の描写が活用されています。

 

主人公の極貧の海外留学

 朝晩二食の賄いつきだ。ただし、それがまた最悪だった。朝食は歯が溶けそうなほど甘いパン一個と、ぬるいコーヒーだけ。夕食は、毎晩あきらかに冷凍食品を温め直しただけの粗末すぎるメニューなのだ。

(P.129)

 

 友人の部屋に転がり込んで家賃を浮かし、極端に食費を削る毎日だ。それでも、最初のうちはチャイナ・タウンの中華料理店に行けば、二、三ドルで餃子とライスにありつけた。

 ディランに連れていかれた店とは較べるのも失礼なほどの質素な店だが、餃子の中味に使っているのがなんの肉かを考えなければ味は悪くはない。

 そのうち、それすら買うのが惜しくなってきた。だから、文字通り一カナダ・ドルでワンダラー・ホットドッグは飽きるほど食べた。街のいたるところにある露店で売っているもので、パンの中央に痩せたソーセージがはさんであるだけのものだ。ただし、かけ放題のオニオン・ピクルスやケチャップ、それに黄色い糊のようなマスタードを山ほど盛ると、一ドルでひとまず空腹はしのげる。

(P.148)

 

 一切れがやはり一カナダ・ドルで売られているピザ屋にもよく行った。一切れでは決して満腹にはならず、おまけに溶けたチーズは伸び切ったゴムのような味がする。それでも空腹にはかえられず、ポケットに残ったなけなしの一ドルで一切れだけを買い求めた。

(P.149)

 

ワーキング・ホリデーで留学したものの、勉強に集中するため、経済的に困窮した生活の海外留学時代。

補給できればよいという割り切った食事風景が、その困窮さを表しています。

 

 

新卒時代の主人公が会社の同期との会食

 揃って駅前の繁華街で馴染みの中華店にはいり、店の隅にあるいつもの席について、食事が始まっても、坂口は一向に話を切り出すことがない。

 ニンニクと唐辛子を強めに効かせた回鍋肉や、特製黒酢が自慢の酢豚など、凱は坂口の好物ばかりを選んで注文してやったのだが、並んだ大皿があらかた空になっても、まだ好きなサッカーの話や、家族との年越しプランなどを意味なくしゃべっているばかりで、肝心の話題を避けているようにも見える。

(P.185)

 

上司との面談の結果、会社のリストラ対象となり、同期との食事へ。

脂ぎった中華料理屋が、20代はじめの新卒時代を印象づけます。

 

 

 

主人公が大学時代の恩師との再開

 店の名前は「道頓堀」。すいぶん来ていなかったが、改装とかリニューアルなどという言葉にはまるで無縁な店だ。なかにはいった瞬間に、甘辛いソースの香りが鼻腔に飛び込んできて、いやでも食欲をそそられる。

 本場大阪の味、と油の染みたのれんに銘打ってあるが、関西出身の店主のこだわりはひとつ。青々とした九条葱を細かくきざんで、これでもかとばかりにお好み焼きの上にトッピングするところだ。

(P.200)

 

会社をリストラされ、無職となった主人公が、大学の恩師と再開する場面。

久しぶりに訪れた、主人公の地元の飲食店。ワクワク感が、その後の主人公の未来を暗示させます。

 

 

主人公が社長との遅い昼食

 車から降りたのはこぢんまりとした店の前だ。

 老舗の鰻屋らしく、入り口は狭いが、格式を感じさせる雰囲気がある。すぐに出てきた着物姿の女将に軽く挨拶をしただけで、外池は慣れた様子でつかつかと細長い通路を進んで行く。遅れないようにそのあとをついて行くと、落ち着いた静かな畳敷きの個室が用意されていて、掘りごたつ式のテーブルに向き合って座った。

 とくに品書きを見たわけでもなく、外池が注文していた様子もなかったのに、手際よく温かいほうじ茶が出され、しばらくして鰻重と肝吸いに香の物がついた膳が運ばれてきた。

(P.367)

 

とあるトラブル対応後に、主人公と上司である社長との昼食。

トラブルの解決方法が見つからない現実と、予定調和的な食事の流れという対比。

 

 



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